ごあいさつ

指揮者 熊谷 弘



 本日はご多忙の中、多数ご来場賜り誠に有難うございいます。

 1980年、クラシック音楽ファンの新しい広がりを求めて日比谷公会堂で開始いたしました「第九と皇帝」は、NHKホール,オーチャードホール、東京国際ホーラム、東京文化会館などを経て今年は33年目を迎え、国際的にも知名度の高いサントリーホールにて開催する運びになりました。今日まで継続出来たのも偏に諸先輩方や関係者各位よりお寄せ戴いたご厚情と多大なお力添えの賜物であり、心より感謝申し上げます。そして、何よりも真っ先に、長年にわたり「第九と皇帝」を支えて頂いたご来場の皆様に厚く御礼申し上げなければなりません。誠に有難うございました。

「第九と皇帝」では、次の時代の日本の音楽界の担手である音楽大学在学中の学生たちのために、今年より、合唱研究員の制度を設けました。この演奏会に参加する事により、プロの演奏家達の演奏を身近に体感し、一方、音楽愛好家の皆様との交流を通し一般社会に於ける演奏会の現状を把握していただければ幸いです。大学各位のご協力により、本日のステージには11名の合唱研修員が参加しています。この経験が彼らの未来に活かされる事を期待しています。


 「おお友よ、そのような調べではない!もっと歓びに満ちた調べを奏でよう」と呼びかけるベートーヴェン自身の言葉につづき、

シラーの詩“歓喜の歌”により「愛と平和、そして喜び」を歌い上げる“第九交響曲”は、ベートーヴェンが描く永遠の理想郷であり、全人類に贈られた愛のメッセージです。そして、ベートーヴェンは、今も、私達に語り続けています。


 毎年繰返す“第九”の演奏は、私にとって一年間の総括であり、自己を再認識し、量り知れない音楽の奥の深さを体験し、未知の世界に向かって進む出発点でもあります。

 未曾有の災害をもたらした東日本大震災から二年余り、余震は毎日のように続き、未だその終熄を見せていません。

 東日本の一日も早い復興を願い、今年も又、大勢の仲間達と共にベートーヴェンの嵩高な世界に踏み入ることの出来る日常の幸せに感謝し、永遠の理想郷に心身を捧げつつ、“第九交響曲"を演奏したいと思います。


(2013年「第九と皇帝」プログラムより)




感動は生き続ける

指揮者 熊谷 弘

 “第九交響曲”と云えば、1952年秋、恩師、クラウス・プリングスハイム教授の指揮の下、コーラスの一員としてコンサートに参加させていただいた時のことが今でも鮮明に思い出される。

 戦後の混乱もやや平静さを取り戻し、復興の槌音も高らかに響き始めた頃、指揮者になりたい一心で八女高校を卒業後直ちに上京した私は、瓦礫の山と化した東京に立ち、自ら選んだ道に人生のすべてを賭けようと決意を新たにしていた。

 プリングスハイム教授(1883ー1972)は、バイエルン出身の音楽家。グスタフ・マーラーに指揮を学ばれ、1910年頃よりヨーロッパ各地で作曲家・指揮者・音楽批評家として華々しく活動されていた教授は、1931年ごろより活動拠点を日本に移し、東京音楽学校(現在、東京芸術大学)の作曲教師として就任され、多くの日本人音楽家たちを世に送り出す傍ら、日本におけるクラシック音楽の振興と普及に尽力された。教授の来日20周年記念演奏会が東京で開催されたのを機に、すでに日本永住の決意を固めておられた教授は、1952年、武蔵野音楽大学作曲科教授及び、武蔵野音楽大学管弦楽団の指揮者として就任され、私は、幸運にも教授に師事を仰ぎ、作曲を学ぶことが出来たのである。

 武蔵野音楽大学就任後、初めて指揮されたのが、東京芸術大学、国立音楽大学、武蔵野音楽大学(我が母校)による合同演奏会であった。各大学がそれぞれのオーケストラや合唱などのステージを終えた後、プリングスハイム教授の指揮で、三大学合同の管弦楽団と合唱団により第九交響曲の“第四楽章”が演奏された。当時、作曲の勉強を始めたばかり、しかも歌うことに関しては全くの素人である私が、男子学生が極めて少なかったことも幸いし?、合唱団のメンバーとして出演する事が出来たのである。

 私は声楽家のたまご達に混じって夢中で歌った。当然の事ながら自分の声は彼等の歌声に圧倒され、私自身にさえ何も聞こえなかったが、各大学の選抜メンバーで編成された大オーケストラと、五百人余りの友人達と歌いあげた充実したハーモニーは教授のタクトのもと見事に調和し、一体となって奏でる“歓喜の歌”は、音楽の偉大さと崇高さを伝えてくれた。クラシック音楽を生で聴く機会すら殆どなかった当時、体で受けとめる生の響きに、鳥肌の立つ様な感動を覚えたことを今でも忘れる事はない。


 音楽を感じることは人類のみに与えられた素晴らしい才能である。音楽は私たちを励まし、優しく癒し、そして未来に進む大きな活力を与えてくれる。

 演奏することは音楽との対話であり、自らを表現することである。そこに演奏者自身が存在する時、音楽は今に蘇る。聴くことも又、音楽との対話であり、聴衆は演奏者とは関係なく彼等の個性と感性によりそれを受け止め、各々の音楽の世界を構築し浸ることができる。聴衆と演奏者が同じ時間と空間を共有しながら音楽を生で体験できる時、その真の価値は見い出されると思う。

 音楽は時間の流れと共にあり、音は時間の流れと共に消えてゆく。音楽は記憶の一部として心に刻まれ、感動は生き続ける。


 いつの日からか歳の暮れになると、日本各地で毎日のように「第九交響曲」の演奏会が催されるようになった。クラシックファンのみならず、多くの人々が“第九”を愛し、その魅力の虜となっている。

 「より多くの人々にクラシック音楽を.....」という私の願いで1981年に開始された「第九と皇帝」は、固定したファンを持つ“第九交響曲"と格調高く華麗なピアノ協奏曲“皇帝"との組み合わせにより、新しいクラシックファンの広がりを求めて続けられている。


 「おお友よ、そのような調べではない!もっと歓びに満ちた調べを奏でよう」と呼びかけるベートーヴェン自身の言葉につづき、シラーの詩“歓喜の歌"により「愛と平和、そして喜び」を歌い上げる“第九交響曲”は、ベートーヴェンが描く永遠の理想郷であり、全人類に贈られた愛のメッセージである。

 毎年繰返す“第九”の演奏は、私にとって一年間の総括であり、自己を再認識し、量り知れない音楽の奥の深さを体験し、未知の世界に向かって進む出発点でもある。

 大勢の仲間達と一緒にベートーヴェンと対話出来る喜びと幸せに感謝し、永遠の理想郷に心身を捧げつつ、今日も“第九交響曲"を演奏したいと思う。


(2008年「第九と皇帝」プログラムより)

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(指揮者熊谷弘監修)

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